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未来に自然が残されました(上郷開発)

嬉しいお知らせが届きました。

 

横浜市栄区上郷の広大な里山を埋め立てて住宅地と商業地を作る開発計画について、東急建設が計画の廃止を横浜市に申請し、事実上中止になったそうです。

 

東京新聞(2023年3月3日)

神奈川新聞(2023年3月4日)

私はこの開発計画を、ころっぱの活動場所の水質を調べていた際にたまたま知りました。

 

子どもたちの未来のために、ホタルの飛び交う澄んだ湧き水も、うっそうと茂った森も、目先の利益のために壊してしまわないで欲しい。そのために何か少しでも役に立てればと、20年近くに渡り瀬上沢を開発から守る活動をされてきたNPO法人瀬上沢基金さんに、デザインパネルの作成やinstagram用の写真撮影等で、わずかではありますが協力させていただきました。

 

パネル作成のために2022年11月頃に現地に撮影に行ったとき、表面から見ていただけではわからない、手つかずのまま残された里山の姿に息を飲みました。

そこには、木を伐り、土を耕し、自然とともに暮らしていた人たちの姿が目に浮かぶような光景が残っていました。

全体から水が染み出しぬかるんだ湿地になっているので、開発事業が始まった当初、水を捌けさせるさるためにコンクリートで水路を造成してあります。でも水は水路をまったく無視して、本来の自分たちの流れたいようにながれるので、水路の中は空っぽで、その傍らを自然の流れが通っていました。

地層から染み出す湧水は、1年を通して一定の温度なので、夏は冷たく冬は暖かいそうです。

周り中が開発されアスファルトで覆われても、ちゃんと水は流れているんですね。

NPO法人瀬上沢基金の角田さんに話を伺いながら歩いていると、たまたま魚を採って遊んでいた中学生2人が、「面白そう」と着いてきました。

普段は野球部と塾とで忙しいという2人は、角田さんの説明に真剣に耳を傾けていました。そんな2人に角田さんが見せていたこちらの池。

淀んだ池は当然、泳ぐのも釣りも禁止ですが、角田さんは子どもの頃、この池でいつも泳いで遊んでいたそうです。そのころは青く澄んだ池だったんだそうです。

 

なぜ淀んでしまったかというと、山から水とともに降りてくる土砂を、下流に流せなくなったから。

本来は土砂は海まで流れ、そのおかげで海は栄養を得て豊かになっていたのですが、都市化が進んだことにより、恵のはずの土砂は厄介者になり、行き場を失い、人の手でかきださなければならなくなりました。

 

そのためこの池の上には、土砂が池に入り込まないようにする升が設けてあり、そこにはまた、本来ないはずの淀んだ汚い水が溜まっています。

 

そんな話をどう思いながら聞いていたのか、時々感想を述べつつ話を聞いていた中学生は、ふと足元に何かを見つけました。

小さなカニです。

当初の計画ではこの環境はすべて埋め立てられて、住宅地と商業用地、ショッピングモールや医療施設などになる予定でした。「これがこれからぜんぶ埋め立てられちゃうんだよ」と言ったとき、中学生のつぶやいた「地球は人間だけのものじゃないのに」という言葉が印象的でした。

 

開発計画が中止になり、このあとこの広大な土地がどのように活用されていくのか、どのような事業が展開されて行くのか、まだまだ興味深く見守っていく必要があるのかと思いますが、とにかく自然が自然のまま残ってくれれば、様々な可能性が残されています。

 

20年近くに渡り着工を止め、ここまでつないで来てくださったNPO法人瀬上沢基金の方々や署名活動を展開された方々に、子どもたちに自然を残したいと思う母親のひとりとして、お礼を言いたいです。

 

あの中学生2人にも、この知らせが届いているといいな。